村のはずれに、深い深い井戸がありました
いったいいつの時代のものなのか、
誰がつくったのか、誰も知りません

しかし、いつのころからか
井戸の底には得体の知れない魔物が棲んでいて
村の人間をとって食うという話がひろまり
昼ひなかでさえも
近づく者はありませんでした


みかづきのきれいな晩だった
わたしは おっかあにつれられて
もののけのすむ井戸へやってきた

「どうだい、もののけなんぞ
 おりはせんじゃろう?
 覗いてごらんよ」

おっかあがわたしをどうするつもりか
本当はわかっていたけれど
わたしは もう どうでもよかったんだ

うちにいたって いじめられるだけだもの



おっかあは ふりむいたわたしを
力いっぱいつきとばして

とても せいせいしたように
わらっていたんだ


…気がついたら わたしは
しめった匂いのする闇に横たわっていた

(あの世って、この世とたいして
 かわらないんだなあ)

だけど 体中のにぶい痛みで
だんだん 自分がまだ生きていることが
わかってきた
ぶあつく積もった落ち葉が
わたしをうけとめてくれたのだった

ふしぎなことに
突き落とされてできたけがは
だれかに手当てされていた 
+ モドル +ツ ギ+


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